-----どうしてリコーダーを?
たぶん皆さんもおやりになったと思うんですけど、小学校の音楽の時間に習った「たてぶえ」がきっかけだったんです。担任の先生がリコーダーに熱心な方で、私はすぐに影響を受けて、毎日毎日笛ばっかりを吹いていました。リコーダーのプロがこの世にいるんだ、と知ってからは、「リコーダーを吹いて生活できたらなあ」と漠然と考えていました。 -----他の楽器もなにか? ピアノを習っていたのですが、バッハの曲を弾いても、「リコーダーでやったらもっと楽しいのに」という苛立ちを感じていました。性に合わないような気がしたんですよね。それで、「リコーダーをもっと本格的に学びたい」と、両親を何とか説得して、花岡先生に弟子入りを果たしました。 |
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-----おいくつの時ですか?
中学二年生です。初めて門を叩いたときに先生が吹いて下さったリコーダーの音色が今でも忘れられないんです。それまで聞いたこともない、甘くまろやかな何とも言えない優しい音でした。いったいどうやったらあんな音色が出せるのだろう、と不思議でたまりませんでした。 -----レッスンは順調に進みましたか? それが、思うような音が全然出せないんです。練習していないわけではないのに、先生のおっしゃるようには吹けないのです。これが1年も続いてしまって、「私には向いていないのかなあ」と諦めかけた時、何か神様の啓示のようにパッとわかった気がしたんです。吹いていて、急に愉しくなったんです。今考えると、一種の恍惚感と言うのでしょうか。 -----突然、目の前が開けたわけですね。音楽をやってる人って、そういう話をよく聞きますよね。 それで、その感覚が忘れられない? そうなんです。先生と出会い、自分の音をやっと見つけたことで、人生が大きく変わったような気がします。それで、本当は音楽大学に進みたかったんですが、何せスポンサーの意向には逆らえないものですから(笑)、普通の大学に入って、自由にリコーダーの練習をしようと考えたのです。大学に入ってからも周囲の反対に耳を貸すことはありませんでした。結局、私の気持ちはリコーダーにしか向いてなかったんです。もちろん、今でもその気持ちにまったく変わりありません。 -----楽器のことについて簡単に教えてください。 さっきお話に出てきましたけど、小学校の授業で吹いているたて笛と、どんなふうに違うのでしょうか? 誤解を恐れずに言えば、ほぼ同じものです。ですが、どうも世間ではこの誤解がかなり大きいんです。リコーダーという楽器は、ルネッサンスからバロック時代には、ヴァイオリンと肩を並べる花形楽器でした。当時フルートと言えばリコーダーのことで、横笛はフルート・トラヴェルソと特に名前が付けられていたんです。ヴィヴァルディやヘンデルにもリコーダーの作品がたくさんありますし、バッハ作曲の「ブランデンブルグ協奏曲」の二番と四番はリコーダーが使われていますよね。 -----それがどういうわけか日本の小学生の教育用になったわけですね。 たぶん誰でも息を吹き込めばすぐ音が出るという便利さとか、プラスチックで大量生産できるとかの理由でしょう。しかし、一番の違いは、その音色なんです。本来のリコーダーの材質は木で、専門の職人の手によるオーダーメイドです。材質と工程の違いから来る要素が大きいと思いますが、リコーダーの本当の音はピーピーした音ではなくて、さっきも言いましたが、優しくて甘い音なんです。知らない方がいるとしたら、この違いをぜひ、ご自分の耳で確かめていただきたいのです。 |
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-----五月のリサイタルのことを教えてください。 リコーダーの音色を聴くいいチャンスになりますね。 いい所にお話を進めてくださってありがとうございます(笑)。 ルネッサンスとバロックの、フランスとドイツの音楽、それと今回は藤原豊さんの「村の生活」という現代曲を演奏します。ヴィオラ・ダ・ガンバの櫻井茂さんと、 チェンバロの岡田龍之介さんとの共演もこれで四回目になりますが、自分でもだんだん息が合ってきたな、と思っています。 -----それは楽しみですね。 今後の進みたい方向とかはいかがですか。 古楽とくにバロックは大好きですから、これからも続けたいと思いますが、現代曲とか、より深いリコーダーの魅力を発掘したり、自分自身がいままで古楽にしか眼を向けていなかったので、もっと幅広く色々な音楽に触れて勉強したい、と考えています。 |
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リコーダー奏者 篠原理華 fan web site |